2019年05月24日

アニメこのはな綺譚8話の裏話

先日、サンテレビで8話の再放送がありました。
8話は作者も思い入れのある回なので、少し思い出話をさせてください。
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構成の段階で、脚本の吉岡さんから「『潮騒』の少女と『てのひら』のおじさんを親子にします」と伝えられた時、実は少し不安でした。
完全に別々の話として描いたのに、取ってつけたような設定にならないだろうか?
でも、実際上がってきた初校は見事に再構成された物だったので、一つだけ「あの嘘つき少女が嫁に行って幸せになるのは違う気がするので『独立して好きな事をやっている』と、変えてください。」と。
ここで設定が変わり、少女は絵が好きで、絵本作家になったというラストに繋がったのだと思います。

話はズレますが、原作の「潮騒」は大変苦しんで描いた物でした。
数年前、海で亡くなった従妹が、どうすれば死なずに済んだのかを悩みながら描きました。「潮騒」では、仲間が一人でもいれば生きていけるというラストでしたが、それが答えかは分かりません。
従妹は絵が好きでした。「イラストレーター目指せばいいじゃん」と私が言うと「プロなんて無理だよw」と笑っていました。

そんな会話も忘れた頃に、吉岡さんは、少女が大人になって絵本作家になる物語を書いてきてくれました。
当然、吉岡さんは従妹の事など知りません。
「絵本に作者名を入れるので、少女の名前を教えてください」
「では、松本礼にしてください。礼と書いてアヤと読みます。」
亡くなった、従妹の名前でした。

長年漫画を描いてきましたが、「物語の持つ力」というのを改めて感じました。
作り話の中なら、どんな夢だって叶えられる。もう居ない人の未来だって描ける。
「潮騒」の少女が嘘ばかりついて、現実を楽しく変えていったように、私はこの先もずっと、幸せな夢物語を描いていこうと思えたのです。
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posted by 文豪さん at 11:32| 日記